自律移動体生態系の創生
About
石黒研では,人とコンピュータの間のインタラクション,Human-Computer Interactionの研究,コンピュータなどの技術による人間の能力拡張,Human Augmentationの研究など,技術と人の関係について幅広く研究しています.
特に自動運転に代表されるような高度な処理能力,知能機械である自律移動体と人との関係について様々に研究を行っていきます.

Vision
技術の進歩によって,これまでの道具としてのコンピュータから,知能機械としてのコンピュータへと変化してきました.自動運転技術をはじめとする自律移動体は,人間の代わりに,高度なセンサを活用して周辺環境を認識し,判断し,走行します.構成は違うものの,目や耳,五感と脳を使って認知判断し,活動する我々生命体と似ているのではないでしょうか?このような高度な知能機械と人の関係は従来の道具としてのコンピュータと人の関係とは異なります.いかに人間と機械が協調するか,目的を達成するためにはどのような関わり方が良いのかをさまざまな視点から検討する必要があるでしょう.
そもそも自動運転技術は,従来の人の運転する自動車の延長線上にあるのでしょうか?ハンドル操作から解放されることで,さまざまなことが可能になるとも言われていますが,これまで人が運転して提供していたサービスを無人化する以外に何ができるでしょうか?
自動運転UX
これまで自動車における人と自動車の接点は,HMI(Human Machine Interface)と呼ばれていました.これは,車両の状況をいかに的確迅速にドライバーに伝え,ドライバの意図を車にフィードバックする,ということを主眼に設計されていたということを表していると思います.一方でコンピュータはInterfaceを活用して対話を行うHCI(Human Computer Interaction)の研究が行われてきました.これは,複雑な処理が可能なコンピュータを人とのやり取りによって活用することを主眼としてきたからです.
自動運転技術により,運転操作から解放されると,人と車両の関係は,これまでとは違い人とコンピュータの関係に近づいていくと考えられます.一方で,車両は動き,その中にいる人も移動します.HCIの知見を活用しつつ,自動車,自動運転車と人との関係を探求していく必要があります.
自動運転データを活用したDX
自動運転車をはじめとする自律移動機能をもつ機械が世の中に与える影響は,勝手に目的地まで移動する,ということに留まりません.自律移動するために搭載されているさまざまなセンサ類はその周囲の環境を常にリアルタイムでデータ化することができます.このような自動運転車が世の中にどんどん増えてくると,リアルタイムで膨大な時系列データを活用することが可能になります.
たとえば,自動運転車に搭載されているLiDARセンサは周囲環境を数cm以下の誤差で立体的に把握することができます.それをどんどん蓄積すると,自動運転車が走るところであれば世界中の三次元地図を常に更新し続けることも可能です.さらにはカメラやその他の環境センサのデータを活用することで,世界中の状況を常に計算可能な状態にすることもできます.このように自動運転技術は走るだけでなく,現実環境を計算可能にする機械でもあります.このようにして得られたデータの活用方法を考えていきます.
自律移動体生態系の創生
これまでの情報技術と機械技術の塊である自動運転,自律移動技術の活用は人の代替にとどまる必要もありません.これまで人類は環境に生息する生物を活用してきました.例えば,約1万2千年前,狩猟採集を生業にしていた人類は,狼を家畜化して犬と共存し始めました.また,約6000年ほど前に酪農や運搬のためにヤギやウシ,穀物を守るためにネコを家畜化していったと考えられているそうです.家畜化することで,狩猟から農耕へ,といった新しい生き方をする社会が持続可能になったとも言えるのではないでしょうか?
では,新たな知能機械である自律移動体を単に人間の代替ではなく,新しい社会のための活用を考えるためにはどうすれば良いでしょうか?その一つが自律移動体生態系の創生と考えています.これは,人類が環境に存在した他の生物の特徴からその活用,共存を図ってきたように,単純でも生活の中に溶け込んだ自律移動体が存在することで,その活用を考えることができるようにする,というアプローチです.それを実現するためにはまだまださまな研究が必要ですが,イヌやネコのように賢かったり,忠実だったり,かわいかったりという.家族のように接せられる人と生活を共にする自律移動体がいる世界を実現してみたいと考えています.
大学院志望のみなさんへ
石黒研は2022年10月に発足した研究室です。2024年度入試に関しては総合分析コースのWebページをご覧ください
また,情報学環 暦本研究室と活動を共にすることが多いです.
情報学環入試情報 (石黒研は「総合分析情報学コース」に所属しています)
石黒研では、現在 正規学生のみ受け入れており、いわゆる「研究生」の受け入れを行っていません。 研究室に参加を希望する学生の方は、情報学環の入試要項をご参照ください。
Ishiguro Lab. currently does not accept “研究生 (research students)”, to join our lab, please consider taking entrance examinations.
Written by
Yoshio Ishiguro, Ph.D., 2022